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センターの場合、着実に成果をあげて来ていると言ってよいだろう。センターの活動の一翼である研修に限っても、これまで24回の研修に60カ国から693人の人々が研修生として参加し、名古屋での生活を体験している。研修コースに参加したアジア、アフリカ、中南米などの開発途上国のリーダーを通して、名古屋からの情報発信は着実に行われている。特にセンターの研修や国際会議に参加した開発途上国の人々は、それぞれの国の開発官庁の基幹職員や研究者たちであり、25年の歳月の間に、それぞれの国で枢要のポストを占めるようになっているので、それらの人々にこの地域がよく知られていることの意味は決して小さくはない。
国連地域開発センターは発足から1996年までの25年間に、500件近い国際会議(注3)を開催してきた。この内の3割は名古屋を会場に開催されており、地域開発に関しては、名古屋は世界の中心の一つであると言ってよく、この点に関しては首都圏、近畿圏にくらべて遅れてはいない。
国連地域開発センターが活動を始めてから、この地域の大学に発展途上国の開発を主題とする学科が設けられるようになってきている。その代表的な例が名古屋大学国際開発研究科である。この大学院レベルのコースは、人的にも国連地域開発センターとつながっており、この地域のいくつかの私立大学にも、同様のコースが開設されるようになっている。
振り返ると大きな実績を残している国連地域開発センターも、四半世紀のあゆみの中にはいくつかの危機があり、特に国連信託基金方式とは言え、実質的には日本政府の毎年度の予算で支えられているという性格上、毎年事業の見直しにさらされる危うさを含んでいると言える。この不安定な性格を持つセンターを長期にわたり発展させてきたのは、国際連合と日本国政府の理解、それにセンターの努力であるが、地元の応援の力も無視できないものがあると思われる。
国連地域開発センターは、国際連合と日本国政府の間の協定に基づく機関であり、独立の存立目的を持ち、その活動の領域は地方公共団体の圏域を大きく超えている。そのために地方公共団体は、センターの活動と公共団体の行政の間の接点を適切に見いだすことが、時に困難であり、センターとの関係が時として疎遠に思われることがないとは言えない。
しかし国連地域開発センターの長い活動が、地域に及ぼした深い影響を考えれば、その重要性は決して強調しすぎることはないのであって、地方公共団体も幅広い分野での協力を考慮する必要があるのではないかと思われる。
これまでの国連地域開発センターと地方公共団体の協力関係を概括すれば(1)事務所スペースの提供(2)「国連センター協力会」を通した協力(3)研究員・研修生の派遣(4)国際会議の共同開催(5)共同研究の実施など多岐にわたっているが、この各々の項目についても、より効果の高い方法を追求すると同時に、必要な場合には新たな展開を考慮すべきだろうと思われる。
現在では地方公共団体による国際交流は、国際協力と位置づけられるような事業を大幅に

 

 

 

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